サブタイトル「お酒は二十歳になってから!!」・・以前ですね。亘が酔った話(クリスマス限定小説)書いたとき、挿絵を描いて下さったMirunaiさんが「美鶴の酔う話も好きです!」と、おっしゃって・・ああ!それは面白そう!!と、ずーっと書いてみたかったんですよ・・・って!人様のせいにすんじゃねぇ!!ごめんなさい!!すみません!!今回かなり警戒警報大注意お馬鹿話です!!・・・うわぁ、もう!(涙)後半の一部分が密かに近々限定になるか予定は未定・・・
酔いどれ魔導士
小五男子4人組が中一男子4人組になったばかりの頃のお話。
中学生ともなれば小学生とは全然違うのです。
ひとつ年を重ねただけなのに、ググッッと!大人になった気がするのです。
今までの自分とは違うようなそんな気がするのです。
「じゃかじゃん!!」
小学校を無事卒業して、亘と美鶴と宮原、カッちゃんは中学生になった。
宮原は私立の中学を受験して無事受かって地元から少し離れた中学に通い、亘と美鶴とカッちゃんは同じ地元の中学に通っていた。
そんな訳でこれからは4人で揃うこともなかなか難しくなるだろうし、中学入学記念も兼ねてパァーッとやろうぜ!と言ったのはカッちゃん。
それじゃ今日はお母さんの帰りが遅いから僕んちでやろうと言ったのは亘くん。
じゃあ俺は亘んちに泊まるけどお前らはサッサッと帰れと宮原とカッちゃんに宣言したのは美鶴さん。
芦川、中学になったことだし、頼むから少し大人になってくれとため息をついたのは宮原くん。
そんなこんなで集まって、騒いで、盛り上がったところでいきなりカッちゃんが上記の台詞と共に何やらビンを持ち出し、みんなの前にかざした。
「なにそれ?」亘がポッキーを口にくわえたまま聞いた。
「親父秘蔵のさ、け、日本酒だ!」
宮原と亘はポカンと二人して大きく目を見開いて顔を見合わせた。
「もう、俺らも中学になるんだしよ。・・・ちょっと味見してみようぜ?」
そういうとカッちゃんはビンの蓋を空けた。日本酒独特のアルコール臭が辺りに漂う。
「何いってんのさ!カッちゃん、ダメだよ!」
目の前のコップに日本酒を注ぐカッちゃんに向かって亘は慌てた声を出す。
「小村、その好奇心はわからなくは無いし・・・確かに興味なくは無いけど、日本酒って酒の中でも特にアルコールの度数が高いんだよ。何かあったら大変だし止めといたほうがいい。ビールならまだしも」
宮原が忠告しながらも言ってる中身が密かに問題発言のような気がする中で美鶴が
「舐めるくらいなら平気だろ。興味あるんならある奴が試せばいいんだ」と、これまた無責任発言をする。
カッちゃんが頬を膨らませた。
「相変わらず付き合い悪いやつらだなぁ。おまえ等飲んでみたくないのかヨ?」
「そりゃ・・・興味なくは無いけどさ」
お酒の注がれたコップを興味深そうに見ながら亘がポツリと言った。
「だろ?!よっしゃー!じゃ、俺と亘でちょっと飲んでみようぜ!」
「「待て!!」」
間髪入れずに美鶴と宮原がハモリながらダメ出しをした。
「三谷、止めたほうがいいよ。ここは三谷んちだし、もしおばさん帰って来て酔っ払ってる三谷なんか見られたらさすがに俺たち立場が無いし」
「慣れない酒なんか飲んでつぶれたらどうするんだよ。朝までぐっすり寝られられたら俺がこの後困る」
朝までぐっすり寝ることの何が困るのか、深くは追求しないことにして宮原はとりあえず同意して頷いた。
「なんだよ。あれこれとうるせーなぁ・・・せっかく持って来たのにそれじゃつまんねーじゃん・・・そうだ!!」
カッちゃんはポンと手を打つと一つの提案をした。
「んじゃこうしようぜ!ここにくじを作ります。当りはひとつ!それにあたった人がこの酒を飲んでみる!!」
「小村・・だから、酒は・・・」
「いいから最後まで聞けよ!当たった奴は選択を二つから選べることにすんだよ。酒を飲むのがいやならその代わり・・・みんなの前で女装すること!!」
高らかに宣言をするカッちゃんを残りの3人はしみじみと見つめながら、この少年はなぜこういう事を思いつかせたら
右に出るものはいないような才能を発揮するのだろうかと、あきれながらも感心してしまった。
「・・・なるほど」
まぁ、それならなぁ・・・酒を飲まずにそっちを選択すりゃ、多少恥ずかしいけどようはお遊びだし。安全は安全だ。
美鶴と宮原は正直言ってくじ引きなら、あたりを引かない自信があった。伊達にご自慢の頭脳があるわけではないのだ。
カッちゃんの作るくじのからくりなんて引かなくても想像はつく。
・・・と、なれば結果は自動的に・・・
「でも、女装たってお母さんの服しかないよ」
美鶴と宮原が同時に自分をチラッと見た事に全然気づかない亘はカッちゃんに言った。
「スカートとかならなんだっていいじゃん!お遊びなんだからヨ」
さっそく紙とペンを出してセッセッとくじを作り始めたカッちゃんにいわれて亘は母のクローゼットにいって適当に服を持ってくるのであった。
「まず俺な・・・よっしゃ!はずれー!!」
おまえが作って自分で引いてるんだからそりゃそうだろう。と、叫ぶカッちゃんを見ながら宮原たちはため息をつく。
「じゃあ、公平を規す為におまえらは一斉に引くことな。せーの・・・」
引く寸前に宮原は亘をチラッと見る。なんの疑いもなく、おそらく自分が当たりを引くなんて事も考えてないんだろうなぁと、その楽しそうな笑顔を見てかすかな良心が痛んだ。
よし!
ドン!!「わっ?」・・・おやおやおやぁ?「あれ?」
気が付けば亘の手と宮原の手にはしっかりはずれのくじがある。
そして美鶴の手には・・・
「よーし!!当りは芦川だなっ!」
美鶴は宮原を睨みつけた。「宮原・・・おまえ・・」「え?なんだ?」
宮原はしれっとトボケタ顔をする。
3人でくじを引く寸前に宮原は美鶴にわざとぶつかってくじを引くのを遅らせた。
そしてその間にうまく、亘がはずれのくじを引くようにカッちゃんの手をずらしたのだ。
果たして3本のうちカッちゃんが当りのくじを持っていたのは予想通り真ん中のくじ。
宮原は美鶴にそれを掴ませて言った。
「まぁいいじゃん、芦川。お遊びなんだしさ。酒飲むのと女装とどっちにする?」
不敵に笑う宮原を美鶴はもう一度ギラン!と睨むと酒の入ったコップを手にした。
「誰が女装なんかするかよ」
そういうとコップになみなみ注がれていた日本酒を一気のみした。
「み、美鶴っ!」亘が驚いて心配そうに慌てた声を出す。宮原はまぁ、そうなるだろうなぁと予測していたのであまり驚かなかった。
多少すまなかったかな、とは思うけど芦川ならアルコール強そうだし・・・まぁ、大丈夫だろう。
最悪つぶれたとしても、三谷に介抱させればチャラに出来るだろうし・・・
どこまでも事態予測は冷静確実な宮原祐太郎くん。いつもならそれでOK!大丈夫!
BUT!!・・・相手は嘗ての幻界の最強魔導士、芦川美鶴さんなんです。
「美鶴・・・美鶴、大丈夫?」
酒を一気のみしてしばらくした頃から一言もしゃべらず俯いてる美鶴に亘は心配そうに声をかけた。
「なに?・・」
美鶴が顔を上げて返事をした。思ったよりしっかりした顔つきに亘はホッとする。
「あ、良かった。大丈夫そうだね。・・・お水でも飲む?持って来ようか?」
「ああ・・いや、自分で行くからいいよ」
そう言って美鶴は立ち上がりキッチンに向かった。足取りもしっかりしてるので亘は感心しながら宮原達の方を見て言った。
「すごいな。美鶴。あんだけの量いきなり飲んだのに全然普通だね」
「だなー!なんだよ。宮原、意外に日本酒なんてたいした事ないんジャン!」
「そんな訳無いだろ。あれは芦川だからだよ。普通の中学生ならああは行くもんか」
お菓子をつまみながら3人はわいわいと感心していた。亘がふと顔を上げる。
「・・・あれ?それにしても美鶴戻るの遅いな・・・」
「俺がなんだって?」
亘が心配して見に行こうかと思ったところに戻ってきた美鶴の声がした・・・・のはいいけどさ!!
「みみみみ美鶴っっっ??!!!」
「ああああ芦川っっっ??!!!」
「おおおおぉぉっっっ??!!!」
「・・なんだよ?・・・女装するんだったよな?・・・違ったか?」
気が付けばさっき亘が持ち出してきていた母の服が無くなっていた。女の人の服なんかわからないから適当に亘は持ってきていたのだが。
・・・・ハイ、亘くん。君が持ってきたのはおそらく『服』ではなかった・・・
これはあれはどうみても!!!ランジェリーだよ!ランジェリー!!!真っ赤な悩ましいキャミソール!!
・・・しかし美鶴も良くわからず適当に着たのだろう。
その上にかろうじて白いブラウスをボタンを一つ二つかけるだけにしてに羽織っていた。
けれどさらに問題が!足はどう見ても生足です!
・・・・長めのキャミソールとブラウスでよかった・・・って!そういう問題じゃなくてっっ!!
「みみ美鶴っ!何てカッコしてんのっっ!!」
「・・・だから女装するんだったろ。・・・似合わないか?」
いえ、似合ってます。恐ろしいくらい、無駄なくらい、色っぽくものすごく似合ってる・・・だから、そうじゃなくて!!
「お前らが言ったんだろ?・・・なんだよ・・」
そう言って美鶴は髪をかきあげ、斜めの視線をこっちによこす。3人同時にクラッとしそうになりながら宮原がハッとして頭を振りながら叫んだ。「芦川っっ!酔ってるなっ?!」
よくよく見れば美鶴の頬はかすかに赤く上気してて何よりもかによりも目が思い切り据わっていた。
「失礼な奴だな・・酔ってるわけ無いだろ?あれくらいで・・・」
美鶴はそう言ってゆらりと亘の方に近づいた。そして顔を真っ赤にして目を真ん丸くしている亘に抱きついた。
「な?亘・・・」
悩ましい姿で耳元に吐息のように囁かれて亘は声も出せずにパニック状態。真っ赤な顔をさらに赤くしてアワアワと手をばたつかせる。
健全思春期真っ只中少年である宮原とカッちゃんはその姿に思わず体液が逆流して鼻を抑えてしまった。
が!!それどころではありません!今はこの事態の収拾が先だっっ!!じゃないと亘の身が危ない!
酔った美鶴が勢いで何をするかさすがの宮原くんも予想がつかない。
いや、つけたくないというべきか。
「芦川!芦川っ!!とりあえず三谷から離れろっ!もう、女装はいいから。あっちで少し休もう、な?」
そう言って宮原は美鶴の肩を引っ張って亘から引き離そうとする。
「小村っ!手伝えよ」
「お、おう!」
引き離されまいとさらに力を込めて亘を抱きしめようとする美鶴を、宮原とカッちゃんは二人がかりで押さえつけた。
美鶴がボソリとつぶやくと亘から手を離して二人の方を振り向いた。
「ああ、もううるさいな。お前ら・・・ちょっと静かにしてろよ」
え?
はい?
「み、みみ美鶴ーーー?!?!」
最初はカッちゃん、次は宮原くん・・・に芦川美鶴さんから王子の目覚めのキスならぬ、眠りの眠りの・・・わああぁぁぁ!!
バッタン!!
真っ赤になって硬直したと思ったらカッちゃんと宮原は重なるようにして倒れこんだ。
そしてそのまま深い寝息を立て始める。
「み、美鶴!何したの?」
亘が慌てた声を出して美鶴を振り返る。美鶴はまだ据わった目つきのまま亘をグイッと引き寄せると呟いた。
「眠らせた」
「ね、眠らせたって・・・あ?魔法・・・?」
美鶴の腕の中に何時の間にやら封じ込められながら亘は目をパチクリとさせた。
「亘・・・」
「・・・え」
腕の中に亘を閉じ込めたまま、美鶴はソファの方に移動してそのまま倒れこんだ。「わっ?!」
自分の上に覆い被さってくる美鶴の肩を押さえつけながら亘は叫んだ。
「ちょっ・・・美鶴、なに・・重いよ」
そう言って見上げて亘は思わずハッとする。
美鶴がじっと自分を見ていた。潤んだ瞳で上気した頬で・・・じっと見ていた。
亘は次の瞬間自分の心臓が早鐘を打ったようになるのがわかる。全身の血が沸騰して何も考えられなくなるのがわかる。
ゆっくりと美鶴の顔が近づいてくる。指でそっと亘の唇をなぞりながら・・・そっと近づいてくる。
「・・やっ!だ、だめ!」近づく美鶴の肩を押しのけながらそれでも亘は必死の思いで言った。
「どうして・・・?」
少しせつなそうな瞳で美鶴は亘に問い掛ける。
「だ、だって・・変だよ。ぼ、僕たち男同士だよ?友達だよ?・・・こ、こんなこと・・ダメだよ」
亘は本当に半分泣きながらやっと言った。それを見ながら美鶴は目を細めて微笑むと優しく囁いた。
「じゃぁ・・・女の子だと思って」
「え?・・」
「どうせ、今俺こんなかっこしてるんだから・・・女の子に見えるだろ?・・・女の子だと思って・・・それなら大丈夫でしょ?・・・ね?・・・亘くん」
『ワタルクン』
耳元で甘くそう囁かれて亘は体から一気に力が抜ける。思わず美鶴の背中に両手を回してすがりついた。
そしてギュッと目を瞑る。もう思考回路は麻痺状態だった。酔っているのは美鶴なのに。麻痺しているのは美鶴の筈なのに。
まるで自分がお酒を飲まされたみたいに・・・酔っている魔導士にさらに魔法をかけて酔わされたみたいに亘はもう動けなかった。
「亘くん・・・」
美鶴もそっと亘の背中に自分の手を回しながら吐息をさらに耳元に近づけて・・・囁いた・・
──・・・ワタルクン・・キスシテ・・
そして次の日。気が付けば雑魚寝をしている4人組。
それぞれ毛布がかけられて、簡単な朝ご飯の用意がしてあった。すでに出勤したらしい亘の母のメモがテーブルの上にあり
──悪ふざけもほどほどに!今回だけは大目に見ます──と、書いてあった。
そして美鶴を除く、3人の頭の上には思い切り?マーク。
何故かと言うと夕べ、美鶴が酔って女装して来てからのあとの事が思い出そうとしても思い出せない。
一体なにがあったんだっけ・・・?
ただ一人、起きた時にはすでに自分の服に着替えてどうやら隠しておいたらしいキャミソールをヒラン!と広げるとそれを見て真っ赤になってる3人に意味ありげな微笑を浮かべて、そして亘にはこれ以上ないくらい優しい微笑を浮かべて・・・やたらと機嫌を良くしている芦川美鶴さんがいました。
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