君の眠る午後(美鶴篇)
子供でもあるまいし、どうしてそういうことが出来るのか俺は何時も不思議だ。
亘は人のうちに遊びにきておきながら気がつくと人のベットに寝転がって何時の間にか寝息を立てている。
ついさっきまで、美鶴ゲームしよう。美鶴宿題教えて。だの、あんなにうるさかったのはなんだったのかと思う。
こちらはいきなり取り残されて正直面白くない。
スヤスヤ寝ている亘のほっぺを思い切り引っ張る。
「ふやぁ・・・」まるで赤ん坊のような声を出して亘は体をちぢ込ませた。
その姿を見て俺は思わず吹き出してしまった。
それでも起きる気配のない亘に俺は諦めのため息をついてその寝顔を見た。
規則正しい寝息を立て、これ以上ないくらい幸せそうな顔して眠っている。
まるでほんとの赤ん坊だ。ふ、とある事を思いついた。
静かに亘に近づいてその胸に耳を当てみる。
・・・トク・・トク・・トク・・・
亘が今生きている証であるやわらかなやさしい音が俺の耳に流れ込んできた。
・・・・トク・・トク・・トク・・・
途切れることなく絶えることなく響くその何よりも甘い音色。意識が麻痺させられる。
ああ、いいな。何時までも何時までも聞いていたい。
でも多分、いや確実にそう思うのは・・・・この鼓動が亘のものだからだ。
決して鳴り止んではいけないこの音色。この鼓動の持ち主が自分にとって何よりも・・・・かけがえのない相手だから・・・
いつまでもいつまでも・・・・そう、俺がたまにこうやって耳を当てたときに必ず優しい音色を響かせていて・・・決して止らずに・・・
・・・・亘の胸に顔を寄せたまま俺はゆっくり目を閉じた。
君の眠る午後(亘篇)
あれ?何時の間に寝ちゃったんだろう。
気がつくと美鶴のベットの上に僕はいた。
ん?なんか重い・・・
ふ、と見ると僕の胸に頭を預けるようにして美鶴も寝ていた。
え?え?何?どうしちゃったの?
びっくりしたけれど下手に動くと美鶴の頭が落っこちそうだったので我慢した。
美鶴はスヤスヤと寝息を立てている。
美鶴が昼寝するとこなんてはじめて見た。びっくりしたけどここぞ、とばかりに美鶴の綺麗な顔をじっと見る。綺麗・・・男の子に当てはめる言葉じゃないのかもしれないけど美鶴に関してはそう表現する以外言葉が見つからない。
だって本当に綺麗なんだ。
きっと・・・美鶴の存在自体が・・・綺麗なんだと思う。うまく言えないけどそう思うんだ。
ちょっと体をずらすと「ん・・・・」と美鶴が声を出した。僕は慌ててまたじっとする。
柔らかい髪が顎にかかってちょっとくすぐったい。て、言うより体全体がなんかくすぐったいよ。
でも本当にくすぐったいのは体じゃないような気がする。
心の奥のそのまたもっと奥がなんだかくすぐったくて居たたまれない。
でもすごく幸せな気持ち。
なんだろうね。一体。
そっと美鶴の髪をなでると僕はまた目を閉じた。美鶴の眠りを妨げないように・・・・
君の眠る午後(アヤ篇)
アヤには大好きなお兄ちゃんが二人います。
一人はもちろん美鶴お兄ちゃんで、もうひとりはお兄ちゃんのお友達で
とっても仲のいい亘お兄ちゃんです。
亘お兄ちゃんが遊びにくる日はアヤは嬉しくて朝からその時間が待ち遠しくて
仕方ありません。今日も亘お兄ちゃんが来るって聞いてたから
アヤはいそいでピアノの習い事から帰ってきたの。
「ただいまっ!」て大きな声で家に入ったのにお兄ちゃん方の「お帰り」って
声がありません。あれぇ・・・?どうしたのかな?
美鶴お兄ちゃんの部屋をそーっとのぞくと美鶴お兄ちゃんと亘お兄ちゃんが
二人でくっついてお昼寝してました。
「ああっずるーい!」大きな声でそういったら二人とも目をぱちくりさせて起きました。
「あ、ゴ、ゴメン。アヤちゃん」亘お兄ちゃんが慌てて美鶴お兄ちゃんから離れると
そういいました。どうしたの?なんだかお顔が真っ赤。
「アヤも!アヤも一緒」そういってふたりの間に抱きついたら
「ああ、そうだな」って美鶴お兄ちゃんが言って亘お兄ちゃんと二人でとっても嬉しそうに笑いました。
そしてアヤを抱き寄せると「みんな一緒だ」そう言ってアヤと亘お兄ちゃんをいっぺんに抱きかかえてポフン!てベットに寝転がりました。
君の眠る午後 (そして三人で)
暖かな日差しが窓から降り注ぐこれ以上ないくらいの優しい一日。
穏やかな寝息をたてて眠っている美鶴と亘。そしてアヤがいた。
アヤを真中にして亘と美鶴はお互いの手を握り、そしてその手をアヤの胸の上に
おいて。アヤを守るように。
この幸せが壊される事のないように。お互いの眠りが決して妨げられる事のないようにと
祈るように・・・・
どうかこれ以上ないくらいの幸福な夢を・・・・三人で一緒に・・見られますように・・・
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