うわぁ・・・また意味のないタイトルになってしまった・・・リクエスト小説第一弾!リクエストはMirunai様より「子亘と大人美鶴」でした。・・・こ、こんなんでよかったでしようか・・(うわぁぁ!ビクビク)Mirunai様!リクエスト有難うございました。謹んで御捧げいたします。
Peppermint milk panic!
この世の中退屈ほどつまらない物はない。
それはある意味幻界とて同じこと。
ましてや十年に一度、現世から来る旅人を待つしかすることがなければ尚の事。
さてさて・・・イタズラ心を起したのはだあれ?
奇妙な違和感を感じて美鶴は目を覚ました。なんだか妙に着てる服・・・正確には
パジャマがやたらきつい。ふと枕の横にあった目覚まし時計を見ればまだ6時にもなっていなかった。
「ん・・・」ベットの上から小さな寝言が聞こえた。いま、美鶴のベットには亘が寝ている。
亘は昨日から美鶴の家に泊まりに来ていた。美鶴の叔母とアヤは週末の3連休を利用して実家に行っておりいなかった。塾を休む事の出来ない美鶴だけが残ったのだが、それを聞きつけていた亘が夕方いきなり「泊まりに来たよー」とやってきた。
亘にすれば誰にも文句言われる事なく、テレビゲームやり放題というのが目的のようだったが心の準備が出来てなかった芦川美鶴さんにしてみればそれはもう、大変な事になったわけだ。
やれ一緒に風呂入ろうだの、やれ一緒のベットで寝ようだの、全く邪気のない亘の誘いに理性を通常の20倍まで高めて、必死に己を保ったのだ。この日美鶴は我ながら自分を褒めてやりたかった。
そして最後まで一緒に寝ようとブツブツ言ってた亘を無理やりベットに押し込んで自分はその隣に布団を引いて寝た。
亘を起してはいけないと、そっと部屋を抜けて洗面所に向かう。起きてもやはり体に違和感を感じた。
まだ暗かったので洗面所の明かりをつける。そして目の前にあった洗面台の鏡に映ってる自分を見た。
「!?」
夢うつつの中ものすごい叫び声が聞こえて亘は飛び起きた。え?え?なに。今の美鶴?
隣を見ると寝てたはずの美鶴がいない。亘は慌ててベットから飛び降りると声のしたほうにむかおうとした。
「・・・・?」なんだかおかしい。着てるパジャマがブカブカしている気がした。でも今はそれどころじゃない。
「美鶴!大丈夫?どうしたの?」「亘・・・」
ちんちくりんのパジャマを着てへたり込んで後ろを向いてる美鶴がそこにいた。「え・・・?」
今までの美鶴よりどう見ても頭ひとつ以上は背が高い。手も足も長くて大きくて、いままでの11歳の体ではない事は一目見て亘にもわかった。「み、美鶴・・・?」驚愕のあまり声の出せない亘の方を美鶴がゆっくり振り返る。
「!!!」
そして美鶴も亘を見て驚愕は驚愕なんだが、別な意味でより驚愕してまた倒れそうになった。
ブカブカになったパジャマを着てビックリし過ぎたせいか大きな瞳を潤ませて真っ赤に頬を上気させてる亘がそこにいた。
すでに腰からパジャマのズボンがずり落ちて思い切り太ももが見えている。つまりは彼氏と初めてお泊りして大きめな彼のパジャマの上だけ借りちゃった(はあと)彼女状態になった・・・思い切り可愛い小さくなってる亘がいた。
芦川美鶴さんダブルパーンチ!!・・・美鶴は自分の理性の崩れる音を確かに聞いた。
「なんでこうなっちゃったんだろ・・・」
とりあえず落ち着こうと服に着替えて(美鶴は叔母の、亘はとりあえずアヤのTシャツとジーンズをそれぞれ借りた)
リビングでホットミルクを飲みながら二人はため息をついた。ホットミルクを飲むとき亘は必ず少し砂糖を入れる。
一方甘い物が苦手な美鶴はいつも少しミントを入れる。なんだか今の二人の立場をそのまま表してるような気が亘はしてしまった。
美鶴の推定年齢17、8歳。亘はおそらく5、6歳というところだろうか。(そんな幼くなってる亘に理性をなくすのはいかがな物か美鶴さん)
「とにかくこうしてても仕方ないだろ。今すぐ元に戻る気配もなさそうだしまずは服を買いに行こう」美鶴がそう言って立ち上がった。
「ええー!外に出るの?・・・大丈夫かな・・」
「大丈夫も何も服なきゃどうしようもない。」「その服じゃダメなの?」「これ動きづらいんだ」
「そうなの?僕はアヤちゃんの服で平気だけど・・・あっ!そうか叔母さんのだからきついんだ」
「違う。ウェストがゆるいんだ」
・・・美鶴の叔母が聞いたらショックで3日は寝込んだに違いない・・・
一応なるべく知り合いに会わないようにと電車で隣町まで足を運んで大型ショップで買い物をする事にした。
連休中のせいかいつもより人が多い。ともすれば人ごみに流されて小さくなった亘を見失いそうになる。
美鶴は亘の手を掴んだ。「え・・・」「迷子になったら困るだろ」その言葉を聞いて亘がむっとする。
「子供じゃないよ」「今、どう見ても子供だろ」「・・・・・」
美鶴は微笑んだ。小さくなった亘の手を柔らかく包みこむ。そしてもう片方の手はジャケットのポケットにつっこみ颯爽と歩く。
(・・・・・)亘は顔が赤くなるのが自分でもわかった。
見とれてしまう。大人になっても美鶴はやっぱりきれいだった。そしてかっこいい。こんな素敵な青年を正直亘は見たことない。
すらりとした長身で手も足もほっそりと長い。でも頼りなげなとこはなくて均整の取れた体はどちらかというとすごく男らしい。
美鶴が歩いてるところだけまるで空気まで違ってるような気がする。ふと辺りを見回すとすれ違う人、すれ違う人全てが美鶴に見とれていた。
亘はなんだかますます面白くなくてずっとふてくされた顔をしていた。
買い物を終えて、それぞれその場で男物の服に着替えた。(亘はあんまり変わらないが)
朝けっきょくミルクだけだった二人はかなりお腹がすいていて、なにか食べていこうということになりハンバーガーショップに入った。
そこでも亘はずっと膨れたままでほとんど口を聞こうとしない。
「どうしたんだよ?」「別に・・・」「別にじゃないだろ」
オレンジジュースを飲みながら亘はチラッと顔を上げて美鶴を見た。そしてポツリと言う。「美鶴はいいよね」
「なにが?」「僕はこんなちっちゃくなっちゃったのに・・・美鶴だけ大人でさ・・・なんかずるいや」
「・・・・」「みんな美鶴見てる・・・今だって。そりゃ大人の美鶴すごいかっこいいからわかるけど・・・なんかやだ」
拗ねたように言う亘に美鶴はトクンと胸が跳ねる。食べちゃいたいくらい可愛いという言葉は誰が考えたのだろう。
ただでさえ小さくなってしまった亘は破壊的に可愛いというのに美鶴にとって今の亘はまさにそのまま、その通り。
「亘だってかわいいよ」まじめに言う美鶴に亘はジュースをむせ返らせた。
「だーかーら!男が可愛いって言われても嬉しくないだろっ!」亘は真っ赤になる。
「いいだろ。別に。当てはめる形容詞がそうなだけで亘だからいいってことなんだから。小さくなろうが
元に戻ろうが亘のその素直なところが可愛くてすきだって言ってるんだ」まっすぐ見つめられて亘は何もいえなくなってしまった。
微笑みながら美鶴は亘の頬に手を伸ばす。細くてきれいな手が亘の頬を包んだ。
「どんなになっても俺にとって亘は亘だよ。そして俺は俺だ」その言葉を聞いて亘はやっと微笑んだ。
ちなみにその二人のやり取りを周りの危ないお姉さま、奥様方がしっかり写メで撮っていた事を二人は知らない・・・
すっかり機嫌のよくなった亘はついでだからもう少し遊んでいこうと言いだした。
この大型ショップには大きなゲームセンタや観覧車がある。亘はそこに行きたいようだ。
「こっちこっち!美鶴はやく!」はしゃぎながらかけ出す亘を追いかけながら、これじゃ本とに年の離れた兄と弟だと苦笑する。
しかし行った場所が悪かった。そんな若い子いっぱいの場所に美鶴が行けばどうなってしまうかをもう少し考えた方が良かったのだ。
「ねぇ、ねぇ!あの人チョーかっこよくない?」「ほんとー!何?あの人。芸ノー人?」美鶴はあっという間に注目の的になってしまいそして好奇心剥き出しのいまどきの御嬢様方にものすごい勢いで周りを囲まれてしまった。さすがの美鶴もそのあまりの勢いに対応が遅れた。
「・・・ちょっ!・・・どいてくれ!・・・亘!」美鶴は必死に亘を目で追う。しかしすでに亘の姿はなかった。
「あれ・・・?」
気がつけば亘は広いゲームセンターに一人でいた。ついさっきまで後ろに美鶴がいたはずなのに今はどこにも見当たらない。
「どこいっちゃったんだろ・・」仕方なくあちこちをウロウロしていたら突然ひっぱられた。
「わっ?」振り返ると男が一人亘の腕を掴んでた。「どうしたの?君・・・迷子かい」
いまの美鶴と同じくらい?・・・いやそれよりはもっといっているのだろうか。どちらにせよまだ若そうなのにやたらと陰気な感じのする男だった。
「え?・・ううん・・えーとその、お兄ちゃんと一緒に」この場合そう答えるしかないなと亘はそう言った。
「そう、じゃぁお兄さん一緒に探してあげるよ。おいで」「え?いえいいです」
「可愛いのにずいぶん大人っぽい話し方するんだね。いいからこっちにおいで」
男はそう言って亘の手を掴みずんずん人気のない方に引っ張っていく。
「や、やだってば!離せ!」ジタバタと暴れても男の手はびくともしない。亘は急に怖くなった。体が小さくなったという事は力も無くなってるという事なのだといまさら気づく。今現在の亘の体形で大人に太刀打ちできるわけないのだ。
「いいからこっち来いっていってるだろ・・」明らかな悪意を男から感じた。亘は震えた。怖い・・やだ、怖いよ。亘は目を瞑る。涙が滲んできた。
「その手を離せ」
汗をかき息を切らせながら美鶴が男の腕を掴みひねりあげる。「な、なんだ。おまえ・・いてぇっ!・・」
「美鶴っ!」亘を掴んでいた男の手の力が緩み、亘は美鶴に走り寄り思い切り抱きついた。
「美鶴っ!美鶴・・美鶴!」我慢してた涙が溢れてくる。「ごめん・・・亘。こわかったろ。ごめん・・・」
美鶴は思い切り男を睨みつける。「・・・なにしようとした?」「な、なにって・・・」あまりの迫力に男がたじろぐ。
「い、いや可愛かったからつい・・・で、でもまだ何もしてねぇよ」
「当たり前だ!」男を力任せ引っ張り、その背中を思い切り蹴り飛ばす。勢いで男は転がっていきついでに目の前に見えてた階段も転がり落ちていった。まだ震えている亘の背中を美鶴は何時までもそっと撫でてていた。
その夜もまさかこのままの姿で家に帰る訳に行かない亘はもう一晩美鶴の家に泊まると家に電話をかけた。
「美鶴・・・」疲れたからもう寝ようと亘を自分のベットに寝せて美鶴はまた布団に横になっていた。
亘がベットから降りてそっと近づいてきていた。「・・・・どうした?」枕を持ってもじもじしている。
「一緒に寝ちゃ・・・だめ?」「・・・まだ怖いのか?」「・・・うん」
美鶴がゆっくり毛布をめくる。ほっとした笑顔になって亘はもぐりこんできた。そしてぴったり美鶴にくっついてくる。
さすがの美鶴も怖がっている亘に対して邪心は湧かない。その長い手ですっぽりと亘を包み込む。
「大丈夫だからもう怖がるなよ」「うん」亘の頭を撫でてやりながら美鶴は考えていた。とにかく早くこの状況を何とかしなくてはいけない。
今のままでは亘にとっては危険が多すぎる。実を言うと今回のこの事態・・・美鶴には心当たりがなくもなかった。だてに幻界を旅してきたわけではない。こんなことが出来る・・・いや、やりたがる人物の見当はついた。
「美鶴・・」考え事をしていた美鶴に亘が声をかける。見ると頬を染めて亘がじっと美鶴を見ていた。美鶴の理性に少しヒビの入った音がする。
「・・・もっと、ギューって・・・して・・・」消え入りそうな声で亘は告げた。
美鶴さん理性の決壊5秒前。その日の夜はまさに蛇の生殺し。
「・・・そんな訳で俺が持ちません。わかってるんですよ。ラウ導師様。サッサと俺たちを元に戻してください」
次の日の早朝。目の下にクマを作りながら美鶴は言った。
「美鶴・・おぬし幻界にいたときと比べればずいぶんこらえ性がなくなったのぉ」
ここは三橋神社・・・美鶴が言ったいわゆる神域という場所に実は幻界と通じる場があり、呪文で開く事が出来る。美鶴だけが知ってる事実だった。(てことにしといてください。)
「あんな可愛い亘。24時間そばにいたら俺は気が狂います!いいから元に戻せ!バルバローネを召還しますよ!」
「全く少しは老人の楽しみに付き合ってくれたっていいのにのぉ・・・最近の若いもんは」
「サキュロズ・・・」「わー!わかったわかった。明日の朝には二人ともちゃんと元通りになるようにしておくわぃ」
「本当ですね?・・・」「ほんとほんと」ラウ導師様はにっこり笑った。
「美鶴!どこ行ってたの?ひとりにしないでよ・・・」
家に着くと目を真っ赤にした亘が飛びついてきた。「ごめん。もうどこにも行かないから」そういって亘を抱えあげる。
亘からツンとミントの香りがした。「ミントミルク飲んでたのか?」「あ、うん・・・だって起きたら美鶴いないから心細くて・・・なんとなく美鶴の真似して・・・飲んでたんだ」はずかしそうに俯く亘に美鶴は目を細める。
正直このちっちゃい亘に未練がないわけではない。美鶴が亘と出会ったのは5年生からだ。それ以前の亘を美鶴が知ることは出来ないはずだった。それをこうしてこの手に抱けたのはある意味幸運だったのかもしれない。
「ちょっと残念かな・・」「え?」抱えあげられ美鶴の首に両手を回しながら、美鶴を見下ろしてる亘のおでこに美鶴はそっとキスをした。
次の日の朝。目覚めた二人はお互いを見てまたびっくりする事になる。
それがどうしてなのかはまた別のお話・・・
退屈ほどつまらない物はない。
さてさてこのイタズラどこまで続く?
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