カウント一万HITお礼リクエスト小説!リクの内容は・・・この小説ほとんどがそっくりリクエスト内容と言ってもいいです。それくらい具体的で楽しいリクエスト(笑)でした。強いて書くなら学芸会美鶴王子様ネタ、でしょうか。そして策士宮原くん炸裂!!(これは私の趣味か。汗)気に入っていただけるかわかりませんが佐野さまリクエスト有難うございました!!謹んで御捧げ致します!
素敵な王子さまの作り方
小学校の二大イベントといえばひとつはなんと言っても運動会。
そしてもうひとつは・・・そう学芸会。
当日を迎えるまでは大道具小道具衣装の準備。てんやわんやの大騒動だけれど終わってみれば楽しかったな。良くがんばったよな。
そんな爽やかな思い出を残してくれるのが学芸会。
宮原くんはそう思ってた。この先もそうだと思ってた。ずっとそうだと思ってた。
ええ!思ってましたとも!
「王子様は芦川くんじゃなきゃぜーーーったいダメ!」
そう言ってクラスの女子一同が宮原のところに直談判にきた。宮原は目をまん丸にする。
今年の学芸会。亘、美鶴、宮原のクラスの演目はグリム童話の「ラプンツェル」に決まった。
配役はわりとすんなり決まっていったのだが主役のラプンツェルの相手の王子役が難航していた。
何の事はない。推薦されてもうこの役は君しかいないだろう、の芦川美鶴が首を縦に振らないからである。
美鶴いわく「そんな役やらされるくらいなら死んだ方がましだ」とその場で一言で切って捨てた。
男子生徒は一様にまぁ、仕方ないよな。あの芦川がそんなもん引き受けるわけないさ。と諦めのため息をついて終わったのだが諦めきれないのは女子生徒一同である。
あの!芦川くんの王子様姿なのよ!この先二度と見られるかわからないのよ!そうよ!頑張りなさい!どんな手段を使っても引き受けさせるのよっっ!!
・・・・女子生徒のそのしめやかな談合に後半数人の女性教師が加わっていたとかいないとか・・・
とにかく意を決した彼女達は総監督である宮原の元にやってきた。そして高らかに宣言した。
「芦川くんが王子様をやらないならあたし達みんな小道具作りも衣装作りも一切しませんから。よろしく」
宮原は頭を抱える。
数少ない小学校のささやかな思い出作りのイベントになぜ苦悩を背負い込まねばならないのであろうか。
「まいったなぁ・・・」
宮原は思い切りため息をついた。実のところ美鶴以外に王子役に適任な人物はいないのだ。
だから宮原としても何とか引き受けてもらえるべく説得にかかろうとは思っていた。しかし・・・
自分で言うのもなんだけれど宮原はクラスでも、いや下手をすれば学年一頭の切れるほうだと自認している。けれど相手はその上を行く芦川なのだ。なまじな事で落せる相手ではない。・・・となれば。
「最終兵器を使うしかないのか」
宮原はポツリと仕方なさそうに呟いたが心なしかその後姿が楽しそうに見えなくもない。
「宮原~!僕に用だって?何?」
芦川美鶴に対する最終兵器三谷亘登場。
放課後の図書室。宮原は亘を呼び出していた。「ごめん。大道具作りで忙しい中」
「ううん。いいよ。・・・でもなんか女子がさぁ・・仕事しないでみんな帰っちゃうんだよね。困るよ」
そうですよね。困りますよね。だから君の力が必要なんです。
「王子役を芦川にしろってごねてるんだよ」
「え?・・あ、そうなんだ」
亘は難しい顔をして唸った。「うーん・・・困ったね。今度ばかりは美鶴も僕がいっても全然聞いてくれないし・・」
「そうだよな。今回はともかく。芦川、三谷の言う事なら聞くもんな。て言うより三谷の言う事だけ聞くよね」
「え・・・」
少し含みを持たせた宮原の口調に亘は心なしか頬を紅くして宮原を見た。
気が付けば図書室の奥の方、宮原に呼び出された場所は本棚がうまく二人を隠して他人にはみられないように死角になっている事に今更ながら亘は気づく。
「み、宮原?」
「それってつまり芦川にとって三谷がすごく特別ってことだよね」
何時の間にやら宮原は亘の退路をふさぐように立ちはだかりその手を亘の両肩に置いていた。というより半ば強引に掴んでいた。
「特別ってことは・・・要するにどういうことだろうね?・・」
最終兵器で確たる効果を上げるためにはそれをどう使うかにもよる。せっかくの手段も効果を上げなければ意味がないのだ。
それを考えると宮原は十中八九自分の考えに間違いないとは思いながらも更なる確信と効果を上げる為の手を打つ事に決めていた。
「ごめんよ。三谷」
そう言うと宮原はグイッと亘を自分の方に引き寄せた。そしてすばやくその首筋に自分の唇を寄せる。
「な、なに?・・あっ!やだっ・・・」
チクン!
首筋に軽い痛みが走った。亘は宮原を突き飛ばし叫んだ。「な、何するんだよ!」
「芦川に対する挑戦状みたいなもんかな・・三谷には悪いけど・・それを見て芦川がどう出るか待ってるから俺がやったって言っていいからね。」
「わ、訳わかんないよっ!宮原のバカッ!」
顔を真っ赤にさせて亘は走って去って行った。宮原は軽く息をつく。
さて仕込みは終了。吉と出るか凶と出るか。これからが腕の見せ所。
「宮原っっっ!!!」
翌日。教室のドアをぶち破りそうな勢いで暗黒オーラを大発散させて美鶴は現れた。「み、美鶴。まって!落ち着いてよ!」
その後ろから亘が必死に追いすがってくる。クラスの皆は何事が起きたのかとあ然としていた。
只一人宮原はまるで事の成り行きを予測していたかのように悠然と美鶴に近づくと微笑んでいった。
「話はわかってるよ。場所変えよう」
「どういうつもりか説明してもらおうか」人気のない階段の踊り場。
今にもバルバローネを召喚させそうな険悪な雰囲気を漂わせながら美鶴は聞いた。宮原はとぼけたように答える。
「なにが?」
「ふざけるなっ!亘にこんなことしてどういうつもりだよっ!」
美鶴は傍らにいた亘を引き寄せシャツの襟を引っ張った。その亘の首筋には虫刺されと言い訳するにはあまりにも苦しいクッキリハッキリ紅いキスマーク。
ヘー・・・初めてやってみたけどこんなにちゃんと痕のこるもんなんだなぁ・・・
「どういうも何も・・・今芦川が言ったとおり只ふざけてやったに決まってるだろ。他になんか意味ある?」
フェイントのような宮原の言葉にさすがの美鶴も一瞬押し黙る。
「大体なんだって芦川そんなに怒ってるわけ?おかしくない?」
そして美鶴の傍らにいた亘の腕を掴み自分の方に引き寄せた。そしてその首に両手を回すと挑発するように美鶴に微笑みながら言った。
「別に三谷は芦川の物じゃないんだし。だったらオレが何しようがかまわないだろ?違う?」
普段の美鶴ならおそらくこんな挑発には乗らなかっただろう。だがキスマークの件ですっかり頭に血を上らせた美鶴はすでに自分を見失っていた。亘を宮原から奪い返し抱きしめながら思い切り叫んだ。
「亘は俺のものだ!亘にキスしたりキスマークをつけたりしていいのは俺だけなんだよ!!」
かかった!!
「なるほど。つまり二人はそういう関係なわけだよね」宮原は確信して微笑む。
美鶴は荒く息をつき亘は真っ赤な顔をして呆然としていた。宮原はズボンのポケットから何かを取り出した。
それを見て二人でハッとする。「あっ?」
宮原の手にあるのは小型の録音機。・・・ということはまさか・・
「芦川。今の会話をクラスの皆に公開するのと王子役を引き受けるのならどっちがいい?」
ニッコリ笑う宮原くんに美鶴と亘は間違いなく悪魔の影を見た。
キャアアァァァッッッ!!!
学芸会当日。美鶴の王子姿を見た女子生徒一同(プラス女性教師)の天まで届きそうな大嬌声。
美鶴が王子役をやると決まって衣装係の女生徒が渾身の思いで作り上げた衣装を着ながら美鶴はおそらくこれ以上ないくらいの不機嫌な顔をしていた。
「美鶴・・せっかくなんだからもうちょっと笑ったら?・・」見かねた亘が声をかける。
「笑えるわけないだろ」
美鶴にとってみれば今回の件は宮原に見事にしてやられた人生初の一生の不覚である。
こんなことはサッサッと終わらせていかに宮原にリベンジするか頭の中はそれしかない。
「ちょっとー!大変、大変よ!」
クラスの女子の叫び声にみんな何事かとそちらを振り返る。「ラプンツェル役の子が階段から落ちちゃって足くじいて歩けないって!」
「なんだって?」総監督である宮原が声をあげる。この土壇場の土壇場に来て・・
「どうする?誰か他の女子代わりにする?」心配そうに亘も言った。
もしや自分が美鶴の相手役になれるのだろうかと女子一同が一斉に色めきたった。宮原はそれを見て逆に冷静に判断する。
普段でさえ美鶴を見てポーッとなってしまう女子たちに、ましてや練習もしてない子達に代わりが務まるわけはない。・・・・となると。
「三谷。芦川の練習に付き合ってよくラプンツェルの役やってあげてたよね?セリフ覚えてる?」
「え?セリフ・・うん。だいぶつき合わされたからね。ほとんど覚えてるけど・・・っ!!まさかっ?!」亘が顔を青くする。
「衣装係!今すぐ三谷にドレス着せて!かつらも急いで!」
「わ・・わーー!!う、うそっうそだろっ?!」亘は逃げ出した。「小村っ!!」宮原が出口にいたカッちゃんに叫ぶ。
「オッケィ!!」カッちゃんは答えるとすかさず亘の前に回りこみガッチリと捕まえると着替えの部屋に放り込んだ。
「わ、バカバカッ!カッちゃん離してよ!裏切り者ーー!!」
部屋を飛び出そうとする亘を出られないようドアを封じてカッちゃんはニヤリと笑いながら言った。
「今逃げたらお前がそれこそ裏切り者になっちゃうだろ。そんなこと親友として出来ないゼ」
思わぬ事の成り行きを興味深そうに腕を組みながら見ていた美鶴に宮原が近づいた。
「怪我の功名だな。少しは機嫌直るだろ?」「少しはな。でもこれだけで済ませる訳にはいかないぜ」
「まぁ、そう言うと思ってたよ。じゃぁ、これはどうだい?もうここまで来たら多少変更あったって同じだし」
宮原は美鶴の耳元に口を寄せるとそっとあることを提案した。
キャアアアアァァァァッッッ×10
舞台に立った美鶴と亘のワンペア姿を見た女生徒全員、女性教師、そして間違った(笑)奥様方の大気圏まで届きそうな大嬌声。
ロングヘアのかつらを付けさせられフワリとしたドレスを着せられメイクまで施された亘はどこからどう見ても可愛すぎる囚われのラプンツェルそのもの。
あうう・・・なんで自分がこんな目に・・泣くに泣けない亘はとにかく早く終わってくれと恥ずかしいのを我慢して必死に役をこなしていた。
場面は進んで魔女によって引き裂かれた王子とラプンツェルが荒野で再会するシーン。
ラプンツェルを失い魔女の手により失明した王子にラプンツェルが泣きながら寄り添っていく。
「愛しい王子様。私はここにいます」
「その声でわかります。あなたは間違いなく私の愛した人。ラプンツェルだ」
そしてラプンツェルの涙が王子の瞳に落ちて王子の目が奇跡的に治ってハッピーエンドの大団円。
ああ、もうすぐ終わりだと亘はそっと息をつく。ふと気づくと美鶴の手が頬に当てられていた。
あれ?こんなシーンあったっけ?
「愛しい人。これからは永遠に共にいましょう」
そう言うと美鶴がゆっくり顔を近づけてきた。亘は大きく目を見開いて一瞬思考停止。しかし次の瞬間。慌ててその肩を押さえると小声で囁いた。
(バ、バカ!美鶴何する気さっ?)(ハッピーエンドにキスはつきものだろ)
微笑みながらキッパリ言う美鶴に亘は思い切り冷や汗をかいて半泣きになった。
(な、ななな何考えてんだよ!こんな大勢の前で・・出切るわけないだろっ!)
(総監督の指示です)
亘は思わず大声になる。
「み、宮原の?・・わ、わわわーーっ!!バ、バカ・・だめーーっっ!!」
亘が絶体絶命の叫びを上げたところで舞台の上はブラックアウト。固唾を飲んで見守っていた観客から悲鳴とも嬌声ともつかない叫びが飛び交い、それを沈静化させるのには城東第一小学校始まって以来の大騒ぎになったという。
そして・・学芸会が終わって後。しばらく宮原と美鶴と頑として口を聞こうとしない亘がいたのであった。
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