・・・やっと出来ました。5万HITお礼小説の若旦那と花嫁シリーズ・・・でも前編だけ(泣)今回、まだ二人があまり新婚夫婦らしくないですが、後半一気にそう行きます。そしてお話の都合上、ちょっとオリキャラが出て来ます。と、いってもパラレルの例のキャラなんですけど。(Mirunaiさん!ごめんね!)後編は出来るだけ早く上げますーー!!(大泣)
初恋初夏海語り(ハツコイハツナツウミカタリ)~前編~
夏なら海。
健全高校生男子なら海。
──だから4人で海行こうぜ!
小村克美くんの明快なる提案でこの夏、亘と美鶴と宮原とカッちゃんは2泊3日で海へと遊びに行く事になった。
まぁ、泊りがけで遊びに行くと言っても要するに行く先は、亘とカッちゃんは勝手知ったるルウ伯父さんの所だ。
近くにルウ伯父さんの顔が聞くホテルもあるので、そこに安く泊めてもらえる事になりカッちゃんはおおはしゃぎしていた。
「イヤッホーゥ!持つべきものは親友だよな!亘のばぁちゃんがやってる店が千葉で良かったー!!」
高校生になってからは亘と美鶴以外はそれぞれ通う高校も違ったので、4人で揃う事もなかなか難しくなっていた。
カッちゃんの今回の呼びかけで4人は久々にハンバーガショップに集まって海へ行く計画を練っていたのだ。嬉々として計画を立てるカッちゃんを見ながら、宮原が苦笑交じりに言った。
「こんだけ計画立てといて、いざって時に補習入りました。にならないよう気をつけろよ?」
「ホテルの部屋割りはどうする?4人部屋の和室は今時期じゃ、さすがにもういっぱいなんだって。ツインを2部屋とってそれぞれ分ける?」
ひさしぶりに4人そろえた事が嬉しくてたまらない亘が、ニコニコしながら皆に問い掛けた。
「あ、んじゃ!俺は・・・亘と一緒で・・・ムグッッ?!」
ものすごい美鶴の一睨みが向かってきそうになる寸前に、宮原がカッちゃんの口を塞いだ。
「それは今から無理に決めとかなくてもいいんじゃないか?ホテルについてから様子をみて、ペア決めたって遅くは無いだろ?」
「そうだね。別に誰と誰がペアくんだって問題ないんだし」
相変わらずニコニコしながらそういう亘に、宮原は少しだけ心に冷や汗を流しながら
──いいや、大いにあるんですよ。と、自分に抑えられじたばたしているカッちゃんとそれを見ながらまだ冷ややかな視線を投げつけている美鶴にため息をついた。
今回の旅行、安穏に終わらせるためにはおそらく己の采配がかなりの行く末を決める事になるだろう。
宮原祐太郎、心密かに悲壮な決意をしている16歳の夏であった。
──青天白雲爽風水平線 一日目──
「ルウ伯父さん!!」
「いよう!亘、よく来たな」
大浜についてすぐ4人はルウおじさんのところに挨拶に行った。
亘の祖母は買出しに出ているらしく留守だった。ルウ伯父さんはニコニコしながら4人を見渡して、少し先にあるホテルを指差すといった。
「あそこがお前らの泊まるホテルだ。そんなに大きくないけど割りと立派だぞ」
「んじゃ、早速行ってチェックインしちまおうぜ!そして泳ぐぞ!」
「小村、慌てるな。来たばかりだぞ。少し落ち着け!大体まだチェックインできる時間じゃないよ」
荷物を持って今にも駆け出さんばかりのカッちゃんに宮原が言った。
亘は苦笑するとルウ伯父さんの方を向いてイタズラッ子のようにおねだりした。
「伯父さん。お店少し手伝うからさ。僕らの荷物ホテルに入れるまで預かってもらっちゃダメ?」
「そう来るだろうと思ったから、当然お前らの手伝いは予定に入れてある。2時間づつ二人交代で手伝いと遊びにわかれりゃいいだろ。その間、店の物も好きなの食っていいぞ」
「やったぁ!さすがはルウ伯父さん!!有難う!」
宮原の強力な後押しで、当然というべきかペアは宮原とカッちゃん。亘と美鶴という事になった。
今すぐ海に飛び込まなきゃ、無酸素状態になりそうなカッちゃんチームを先に遊びに行かせて、亘と美鶴が手伝いに残る事になった。
少し大きめの店のエプロンをつけながら、亘が少し心配そうに美鶴を見た。
自分はともかく、よく考えたら美鶴にこういうことは向いてないんじゃないだろうかという気がしたのだ。
「あのさ。美鶴も海、行きたかったら行って良いんだよ?店の手伝いなんて僕一人でも十分なんだし」
元々この計画を立てたとき、美鶴はあまり乗り気ではなかったのだ。
生来が外出するよりインドアを好むタイプだし、何よりも人ごみを美鶴は嫌う。だから海みたいな人のごちゃごちゃ居るようなところには本当は好んで来たくは無かった。
でも、そうやって渋っていたら亘がものすごく悲しそうな顔をして、まるで散歩に連れて行ってもらえない子犬のような瞳で(しかも強力必殺の上目遣い)「行かないの・・・?」とか何とか呟くもんだから、美鶴は思わず内心動揺しまくりで(う・・)とか唸って、とどめは宮原が「ああいうとこって人多いからなぁ。いろんな奴が来るんだよな。ナンパ目的の奴とかさ。・・・三谷、可愛いからなぁ。気をつけないとなぁ」とか美鶴に聞こえよがしに呟いて、次の瞬間には美鶴は参加を表明していた。
「俺は人の多い海に出るより、まだこっちの方がいい。それに叔母が忙しい時は俺とアヤが家事してるんだから亘ほどじゃなくてもこういうことは割とやれるよ」
亘の気持ちを見抜いたような、美鶴の返事に亘は少しホッとして笑った。
「亘の方こそ、行きたかったら行けばいい。せっかく楽しみにしてたんだろ?」
「ううん!いい!美鶴と一緒じゃなきゃつまんないから。お店の手伝いだって美鶴とずっと一緒なら嬉しいし、楽しいよ。だからいいんだ。ね?」
そう言って海をバックに小首を傾けて極上の笑顔を浮かべながら、若夫婦の嫁のようなセリフを言う亘に(しかもエプロン姿と来たもんだ)美鶴は今回自分の理性は水平線の彼方まで飛ぶ事になるんじゃなかろうかと、内心クラクラしていたのであった。
「・・・なんか変だなぁ」
「どうしたんだ?」
昼近くになって、客が次々来始めて二人とも忙しく注文を取ったり、品を運んだりしていた。美鶴が居るおかげで女性客が急激に増えたりして、ルウ伯父さんは大喜びしていたが──美鶴は思い切り無愛想な顔で、それでも当り障り泣く応対をしていたが。
ちょっとお客が途切れて一息ついて、麦茶を飲んでいる時亘が言った。
「うん・・なんかね。さっきから何人も男の人に声かけられるんだよね?・・それが、アレ、髪切ったんだ?可愛いねとか。こんなとこでバイトしてたんだね。言ってくれれば毎日来るのに、とか。
全然知らない男の人ばっかりから。・・・なんだろ?誰かと人違いされてるのかなぁ」
美鶴は亘のその話を聞いた途端に、晴天だというのにいきなり背後に暗黒オーラを背負い始めた。
「何人も・・・?」
「うん。なんだろうね?」
そう言って苦笑いしている亘に言ったそばから、いかにもといった感じの二人組の男性が近づいてくると、いきなり亘の肩をつかんでまくしたてた。
「あれー?なんだぁ、こんなとこでバイトしてたのぉ?うわ!エプロン姿メッチャ可愛いじゃん?!
ねぇねぇ?バイト何時まで?終わったら俺等と遊ばな・・・」
バキッ!グシャーーーッッ!!!
二人組みの一人が言い終わらないうちに、その顔面に思い切り美鶴の蹴りが炸裂していた。
美鶴は同時に素早く亘を引き寄せると、その腕にしっかりと囲いながら二人組みを睨みつけた。
「いってぇー!なんだよ?お前!」
「下手なナンパなら引っかからないから、サッサッと消えろ!!」
「ああ・・・?なんだよ。テメー?!まさか留美ちゃんの彼氏とか言うんじゃないだろうな?」
「留美・・・?」
亘が目をパチクリとさせながらその名前を反芻した。
一方、すっかり頭に血が昇ったらしい美鶴は更に迫力を増して相手を睨みつけると叫んだ。
「そうだ!悪いか?!亘は俺のものだっ!亘に触ったり、キスしたり、抱きついて一緒に寝たりしていいのはこの世で、俺ただ一人だけなんだよ!!」
その場に居た二人組みだけでなく、おそらく軽く半径5メートル以内のそこにいた美鶴以外の人物全員の空気がまたたくまに凍りついたのはいうまでもなく。
そして良かったというべきか悪かったというべきか、騒ぎを聞きつけて駆けつけたルウ伯父さんと、これまた海から戻ってきて何事かと駆けつけた宮原とカッちゃんが思い切り鉢合わせをしてしまい、なんともいえない顔をしてお互いを見ていた。
「・・・エー・・・宮原くん・・その、芦川くんは意外に冗談が好きなんだよな?」
「は。え、えーとえーと・・・そう、ですね・・・」
「アイツは冗談なんか言わないゼ。恐ろしいことに亘に関しては全部本気の発言しかしないんだ」
「・・・・・・・・・・・宮原くん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・すいません。否定が出来ません・・・・」
この後自分の甥の行く末を思って、恐らく涙したであろう伯父の気持ちを思うと宮原くんも思わず心で涙せずにはいられなかった。
「ああ、それは多分。これからおまえ等の泊まるホテルのオーナーさんの娘の留美ちゃんの事だよ」
夕方、もう店も閉めるという時間になって今日の手伝いのお礼と(結局何だかんだあった為、美鶴がガンとして亘が海にいく事を許さなかったので、亘と美鶴だけが一日いっぱい手伝う事になったのだが)伯父さんが作ってくれた焼きそばを皆で食べている時に伯父さんが教えてくれた。
「すごい可愛い子でね。この辺のアイドル的存在なんだ。・・・ああ、なるほどなぁ。確かに亘に似てるなぁ」
伯父さんはそういうと奥に行って何やら一枚の写真を差し出して、4人に見せた。
4人が一斉にそれを覗き込む。伯父さんの店の前で何人かの女の子達が笑って写っている写真だった。
その真ん中に髪の長いきれいな亘そっくりの子がいた。
「・・・これは似てるとかいうレベルじゃないですよ。そっくりだ!」
「ほんとだよなぁ・・・亘にロングのカツラかぶせて、スカート穿かせたみたいじゃん!」
「・・・カッちゃん、やめてよ」
顔を赤くして口を尖らせる亘を見ながら、伯父さんは笑っていった。
「まだ、二十歳くらいなんだけど最近結婚する事になったって聞いたなぁ・・・まぁ、なんにせよ。これからも誤解はされるかもしれないが、相手にしないようにするしかないだろ」
「相手も何もそんなやつ等は俺が近づけません」
キッパリハッキリそういう美鶴に、亘以外の全員が思わず顔を引きつらせる。
「うん。大丈夫だよ。伯父さん。美鶴がいるから」
そう言ってニッコリ笑って嬉しそうに美鶴を見る亘に、お前ら!どこの新婚夫婦だっ!と、突込みをいれたいのを宮原くんとカッちゃんは、少し青ざめているかわいそうな伯父さんの前で必死にこらえておりました。
「結局、今日は海入れなかったなぁ・・・」
海辺を歩きながら、ホテルに向かう途中で亘が残念そうに呟いた。カッちゃんがその横を打ち寄せる波に当たらないように、飛んだり跳ねたりしながら歩いていた。宮原と美鶴が少し遅れてその後をついて歩いている。
「だから、交代するからいって来いって言ったじゃんか」
「うん・・だって美鶴がダメって言うからさぁ・・・美鶴に心配かけるのイヤだったし・・」
「あーそうですか。そうですか。・・ったく、おまえらは・・・うわっと!」
思ったより大きな波が押し寄せてきて、カッちゃんが目測を誤ったらしく、波の中に大きな音を立ててバシャンと着地してしまった。
「わぁっ?!」
カッちゃんもろとも隣にいた亘も、もろにその水しぶきを浴びてしまった。小走りに駆け寄ってきた宮原と美鶴が声をかける。
「あちゃー・・・三谷大丈夫かい?何やってんだよ・・小村」
宮原と美鶴に背中を向けていた亘は振り返ると、ポタポタと頭からも滴をたらしながら、子犬の泣き声のような声で呟いた。
「・・やぁ・・濡れちゃったぁ・・」
海と夕日をバックにほとんど全身──をずぶ濡れにしながら泣きそうな顔で自分達を見ている亘に、一瞬美鶴のみならず宮原くんもカッちゃんもフリーズ!!!
それは何故か?
もともと真っ黒な亘の髪は水しぶきを受けてしまった為、夕日を受けてつややかにキラキラと光っている。そして流れ落ちる雫は亘の頬や首筋を伝ってシャツの襟から覗く、胸元に滑り落ちていく。そしてその先は・・・
今日三谷亘くんが着ていたのは、上半身本来ならなんて事のないはずの真っ白いシャツであった。
高校生男子らしく素肌の上にそのまま真っ白な解禁のシャツ。
ハイ。素肌の上に。
それが濡れた状態になるという事はつまりどういうことかというと・・・
横で思いっきり、顔を抑えて固まっている美鶴を横目でチラリと見ながら、宮原は大きなため息と共にカッちゃんに向かって呟いた。
「小村・・・わざと?」
「ハ?何がだよ?」
「いや、すまん・・・とにかく今日のホテルでの相部屋はお前と俺に決定だ」
「え?なんでだよ?」
「小村・・・お前も男ならわかるだろうけど、男にはムッツリとオープンの2種類しかいない。そして芦川は間違いなく前者のタイプだ。そのタイプはモロ見えより、チラリズムに思い切り反応したりするんだよ。・・・そんな奴の理性崩壊のとばっちりを受けたいか?」
「何言ってんだよ?宮原?わけわかんねーよ。ちゃんと話せよ!!」
宮原はもう一度深々とため息をつくとポツリと言った。
「・・・・三谷、今夜寝れるといいけどなぁ・・」
ホテルについてすぐ、まだ頭に?マークを飛ばしているカッちゃんと、天に向かって祈りをささげている宮原を後にして有無を言わさずといった感じで美鶴が亘を引っ張って、自分たちの部屋の中に飛び込んだ。当然といえば当然なのだが、まだ濡れたままの格好の亘は、目を真ん丸くさせながら美鶴に抗議の声を上げた。
「ちょ・・ちょっと!美鶴!どうしたのさ?手、離してよ。まず着替えないと僕まだびしょ濡れなんだから!」
そう言って美鶴の手を振り解こうとした亘を美鶴は逆に強い力で引き寄せて抱きしめると、思い切りベットの上に倒れこんだ。
「わぁっ?!バカ、美鶴!ベットが濡れちゃう!!」(今、抗議を上げるべきはそこじゃないぞ!三谷亘!!)
亘は怒った声で両手を美鶴の胸に当てて、突っぱねようとしたが、亘に覆い被さってきてる美鶴の体はびくともしなかった。
美鶴は亘の頬に手をやって、そっと撫でると少しだけ申し訳なさそうな声で小さく囁いた。
「ごめん・・・亘・・限界だ」
「美鶴・・・?」
何がなにやら亘は皆目見当がつかず、切なそうに自分に近づいてくる美鶴の瞳をじっと見ていた。
美鶴の手が亘の濡れたシャツのボタンにそっと伸びて来た時・・・
「きゃあぁぁぁ!!助けてぇ~!」
ものすごい悲鳴と共に、ドアをバターンと開けて(先走って焦った美鶴がカギをかけ忘れていたらしい。宮原談。)誰かが亘と美鶴の部屋に飛び込んできた。
飛び込んできたその主はベットにいた亘と美鶴の間に滑り込んできて、叫んだ。
「やだっ?何冷たい!びしょ濡れじゃない~!あなた達、こ~ゆ~プレイが好きなの?
いくら暑いからって変わってるね~?」
「な、な、なになに?キ、キミ誰っ?!」
「三谷?芦川?どうしたんだよっ?!」
騒動を聞きつけて、隣の部屋にいた宮原とカッちゃんも飛んできた。
そしてまだ明かりの点いていなかった部屋の照明をつけたと同時に4人は叫んだ。
「あ!!!!」
亘のすぐ横で亘そっくりの髪の長い少女が、4人を見渡しながらニコニコしていた。
PR